先に、結論
家計簿を90日間、毎日つけ続けようとした記録を数字で並べると、継続率は一直線には上がりません。最初の2週間は高く、3〜6週目で大きく落ち込み、そこを越えると再び上がって安定します。
谷になったのは全体のちょうど中間、6週目あたりでした。挫折の山場は最初の数日ではなく、慣れてきた頃に来る、というのがこの記録から見える形です。
続けられるかどうかは、谷の手前で諦めるか、谷を越えるまで続けられるかの差でした。
何を記録し、何と比べるか
ここで扱うのは、家計簿アプリへ「その日、記録をつけたかどうか」だけを90日間追った、ある一人分の記録です。金額の内容やアプリ名は出しません。見たいのは継続率の推移だけなので、そこに絞ります。
一人ぶんの記録なので、再現性を約束するものではありません。ただ、比較の軸として、習慣の定着にかかる日数を扱った公開研究があります。Lally らが2010年に発表した研究で、対象は食事や運動など自分で選んだ日常の習慣行動を持つ96人の参加者です。参加者は12週間(84日間)、毎日その行動を実行したかどうかと、行動が自動的になった度合い(習慣化尺度)を記録しました。結果、行動が定着する(自動性がほぼ頭打ちになる)までの日数は、中央値で66日、範囲は18日から254日でした。
この研究は食事・運動の習慣が対象で、家計簿の記録そのものを扱ったものではありません。ここでは「新しい習慣が定着するまでには、個人差はあってもそれなりの日数がかかる」という一般的な傾向の比較先として使います。
90日間の継続率(2週間ごと)
2週間区切りで、記録がついた日数と継続率を並べます。
| 期間 | 記録がついた日数(14日中) | 継続率 |
|---|---|---|
| 1〜14日目 | 13日 | 93% |
| 15〜28日目 | 8日 | 57% |
| 29〜42日目 | 6日 | 43% |
| 43〜56日目 | 9日 | 64% |
| 57〜70日目 | 12日 | 86% |
| 71〜84日目 | 13日 | 93% |
| 85〜90日目(6日間) | 6日 | 100% |
一番低いのは29〜42日目の43%です。ちょうど全体の中間、6週目あたりに谷が来ています。
谷はなぜ来たか
15〜42日目にかけて継続率が落ちた期間を見直すと、原因は単純でした。最初の2週間、レシート1枚ごとに細かく入力しようとしていて、その手間が積み重なって重くなっていたのです。
43日目あたりから、入力の粒度を「食費・固定費・その他」の3つに絞りました。その週から継続率が上向き、以降は落ちずに安定しています。谷を越えたきっかけは、意志の強さではなく、入力の負荷を下げたことでした。
続かなかった型は、3つに分かれた
記録が抜けた日を見直すと、理由はだいたい3つに分かれました。
- 息切れ型:最初の意気込みで完璧な入力を目指し、3週目あたりで力尽きる
- 中だるみ型:生活が落ち着き、記録する理由を見失う
- 中断型:忙しい週や外出が続き、再開のきっかけを失う
3つとも、記録が「作業」になった瞬間に起きています。入力の粒度を下げてからは、この3つの型がほとんど出なくなりました。
Lallyの研究と比べると
この記録の谷(29〜42日目)は、Lallyらの研究の中央値である66日より手前に来ています。研究の対象は別の習慣行動なので単純比較はできませんが、範囲が18日から254日と幅広いことを踏まえると、この記録の谷が中間地点に来たこと自体は、個人差の範囲に収まる動きだと見ておくのが妥当です。
大事なのは日数そのものより、「谷を越えれば継続率は戻る」という形が、この一人分の記録でも見えたことです。
あなたが今、記録を続けているなら
- 始めたばかりで抜けが出始めているなら:入力の粒度を今より粗くしてみると、負荷が下がります
- 3〜6週目あたりで抜けが増えているなら:谷はここで来ることが多い期間です。抜けても記録をやめる決断はまだ早いかもしれません
- 2ヶ月以上続いているなら:ここから先は抜けにくくなる傾向が、この記録では見えています
どの型に当てはまるかは、生活のリズムや入力の設計によって変わります。ここは個別判断になります。
まとめ
- 90日間の継続率は一直線ではなく、6週目(29〜42日目)に谷が来て、その後86%まで戻った
- 谷を越えたきっかけは、入力の粒度を下げたこと
- 抜けの理由は「息切れ型」「中だるみ型」「中断型」の3つに分かれた
- 習慣の定着にかかる日数を扱った公開研究(Lally et al., 2010)では中央値66日、範囲18〜254日
- これは一人分の記録であり、継続率や日数を保証するものではありません(2026年7月時点)
家計簿を「続ける仕組み」そのものについては、月1回5分の運用に作り替える考え方で別の角度から整理しています。
—— 渋川 整
一次情報(公式ソース):Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40, 998–1009. doi:10.1002/ejsp.674
本記事は情報提供であり、特定のサービス・アプリの利用を勧めるものではありません。記載の継続率は一人分の記録であり、将来の結果や再現性を保証するものではありません。2026年7月時点の整理です。