外気浴の木の椅子に置かれた封筒。夕方の温かい空。落ち着いたミニマルイラスト
外気浴の椅子に置いた封筒。急がず、使い道を考える時間。

退職金のような、まとまったお金が手元に来る。これまで受け取ったどのお金より大きい、という人も少なくないお金です。

受け取った日のことを、サウナの外気浴になぞらえて考えてみます。外気浴の椅子に座って、しばらくぼんやりする ── そんな時間です。

大きいお金ほど、すぐに動かしたくなる

まとまったお金が入ると、体が少し急ぎ始めます。

全部投資に回そうか。一部で何か買おうか。減る前に動かしたい。そういう気持ちが、自然に湧いてきます。

公開されている調査や記録を読み解くと、この急ぎは繰り返し現れます。退職金が入ったその月のうちに大きく動かす。気持ちは分かります。でも、後から振り返ると、もう少し待てばよかった、という声も同じくらい残っています。

退職金は「熱」の相にいる

このサイトでは、お金を三つの相で見ています(サウナと、お金の三相)。

退職金は、配当や売却益と同じ「熱」の相です。働いた年月から、温かさが返ってくる。気持ちのいい相です。

ただ、サウナ室に一日中いる人はいません。熱は、短く受け取って、出る。退職金も同じだと思っています。受け取った高揚のまま、その場で全部を動かさない。一度、外気浴の椅子に座る。

外気浴で、ただ眺める

外気浴ですることは、何もしないことです。

封筒を椅子の横に置いて、空を見る。使い道を決めるためではなく、急いでいる気持ちを、少し冷ますための時間です。

外に出て眺めていると、見えてくるものがあります。これは今すぐ要るお金ではない。来年も再来年も、たぶんそのまま置いておける。だとしたら、今日決める必要はない。

急がないと決めること自体が、ひとつの使い道になります。

全部ではなく、往復で

退職金の扱いで、私が穏当だと思っているのは、一度に全部動かさないことです。

全部投資する、でもない。全部使う、でもない。少しを投資の相(冷)に回し、大半は外気浴の相(外)に置いて眺める。しばらく経って、また少し動かす。この往復で、まとまったお金は少しずつ落ち着いていきます。

急いで全部を一つの形にすると、後で選び直しにくくなります。あわてないと、選択肢が手元に残る。落ち着いてから使うほうが、たぶん満足度も高い。

急がなくて大丈夫です

大きいお金ほど、急がない。これが、外気浴の椅子になぞらえて出てくる答えです。

退職金は、長く働いた相手から返ってきた熱です。受け取った日に、その熱のまま使い切らなくていい。一度眺めて、往復しながら、ゆっくり整えていく。

封筒は、まだしばらく外気浴の椅子の横に置いておく。それくらいで、ちょうどいいのだと思います。

—— 渋川 整