これも、受け取った話です

2000 年のドットコム崩壊も、当時の報道や金融庁・取引所の公開記録から読み解いた「受け取った話」です。 バブル崩壊の記事と同じく、市場の記録と残された語りを並べて整理しています。

ただ、この事件は、いま(2026年)の相場を見るときにも、何度も思い出す価値があります。 「利益が出ていない会社に、夢の分だけ値段がついていた」 ── その構造は、形を変えて、今も繰り返されるからです。

screenやコインで作られた高い塔がぐらつき、低い地面の高さまで静かに沈んでいくミニマルなイラスト
物語が値段を押し上げ、利益という地面が見えなくなる。やがて、地面の高さまで戻る。

何が起きたか(数字で)

1990年代後半、インターネット関連企業の株価が異常な勢いで上がりました。 利益が出ていなくても、「将来きっと儲かる」という物語だけで、株価がつき続けた時代です。

そして 2000 年、その物語が剥がれ始めると、下落は2年半続きました。

暴落起きた年最大下落底打ち
ドットコム崩壊2000約 −78%2002年10月ごろ
リーマンショック2008−56%2009年3月
コロナショック2020−34%2020年3月
図1 ハイテク株指数は、夢の分の値段を、ほぼ全部はがされた。

米ハイテク株指数(NASDAQ100相当)の最大下落率・底打ち時期より作成(概数・2026年5月時点の整理)

下落率だけ見ると、ドットコムはリーマンより深い暴落でした。 理由はシンプルで、利益という「地面」がなかったからです。利益・配当という地面を確かめてから買う人は、戻る場所のある高さに立てます


当時の記録から繰り返し読み取れること

1
「利益が出てから買う」では、出遅れて見えた
物語の途中は、慎重な人ほど取り残されて感じる
2
「みんなが買っている」が、唯一の理由になっていた
値段の根拠が、値段が上がっていること自体になる
3
剥がれ始めると、地面の高さまで一気に戻った
夢の分の値段は、夢が冷めると残らない

特に 1 番目が、当時の体験談として何度も語られています。 慎重に「利益・配当という地面」を確認している人ほど、上昇の途中では臆病に見え、損をしているように感じる。その焦りが、最後に高値で飛び込ませる。

これは、コロナ後の一部の急騰や、その時々のブームでも、形を変えて観察される構造です。


受け取った話から、私が整えたこと

1. 「地面」を一行で言えるかを確認する

その会社・その商品は、何で利益を生んでいるかを一行で言えるか。 言えないなら、自分はいま「物語」を買おうとしている可能性が高い。公開記録を並べると、これが最初のチェックとして繰り返し効いてきました。

2. 「出遅れ」の焦りを、判断材料から外す

「みんなが儲けているのに、自分だけ乗れていない」── この焦りは、お金の判断で一番危ない燃料です。 出遅れているように見える時期こそ、地面を確認する時間に使う。急がない人が、最後に残ります。

3. インデックスという「地面の平均」を土台に置く

個別の物語を見抜くのは、プロでも難しい。 だから、土台は**市場全体の平均(インデックス)**に置いて、物語は「余剰の範囲で、少しだけ」。これは新NISAの記事で書いた整理ともつながります。


2026年5月時点で、振り返って思うこと

ドットコム崩壊から四半世紀。 生き残った一部の企業は、その後、世界を変えるほど大きくなりました。「だから、あの時買っておけば」と言うのは簡単です。

でも、当時その物語のなかから「生き残る数社」を見分けられた人は、ほとんどいませんでした。大半は、地面のない高さで飛び込んで、戻らない値段を抱えました。

受け取るべき教訓は「ITは儲かる」ではありません。 「物語に値段がついているとき、自分は地面を見ているか」 を、静かなときに確かめておくこと。それだけです。

—— 渋川 整


これは「過去事例」シリーズの一本です。バブル(1990)、リーマン(2008)、コロナ(2020)と並べて読んでみてください。

本記事は情報提供であり、特定の金融商品の購入・契約を勧めるものではありません。数字は概数で、2026年5月時点の整理です。投資判断はご自身の責任で。